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Posted by 花乃(かの)
          
         
        
        
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LOVE SONGのひと 1話
 
 
駅の改札を出ると、
コンコースを右手にして、短いエスカレーターを降りる。

立ち読みの客で溢れる駅ビルの本屋の入り口は開いたまま。
ひんやりとした冷気を吐き出すだけで、
中からは咳払いさえ聞こえない。

旅行帰りと思しき中年の女性が
黒い布地のカートを引きずりながら、私を追い抜いた。

女性のあとを暫く追いかける形になったが
すぐに二手に分かれる。
私は「TAXI」の矢印とは反対方向へ。
迷わず横断歩道の信号を見上げた。

タクシープールを渡って、数メートル。
そこには、つたの絡まった
ぞくっとする位大きな木がそびえ立つ。

こじんまりとしたベッドタウンには
まるで似つかわしくない風貌をたたえて。
締め付けるように。
残酷にも見えるほど、つたは哀しく絡まっていた。



私は、いつも
ここで携帯を取り出す。

目的の場所へは、あと10分。

見慣れた、あの部屋で鳴っているであろう電話機を思い浮かべた。

コール音が、一度音色を変える。
家主の留守を知らせる合図だ。

聞き慣れた留守電の音声案内。
それを確認すると、携帯を閉じた。

私はまた歩き始める。
今度はなだらかな坂道だ。


大学の仕事を終えて、智久の部屋に向かうのは
もう1年くらい前から続いている事。

この坂道も、いい加減慣れたけど
誰もいない部屋の鍵を開けるのは、まだ好きになれない。

智久は、まだ学校だろうか?
そう言えば試験が近いと言っていた。

雑誌の取材かもしれない。
スタジオなら連絡も取れないし。

ああ。夕飯の用意はするべき?

溜め息をつきながら、コンビニを横切る。
ラックに、智久が表紙の男性ファッション誌が並ぶ。

未だ8月だというのに、張りのある素材のコートを着て、
智久はじっとこちらを見据えていた。

私の知らない智久の顔だ。







小さくカチャリと音がして、いつもの足音が聞こえた。

「ゴメン。起こした?」
「んん…」

いつのまに眠ってしまったんだろう。

「おかえり」
「うん」

「何か食べる?」
「いや、眠てえ〜」

智久は倒れ込むように、私の右側にうつぶせになった。

「汐さん。この部屋、暑くね?」
「そう?」

「智久、窓開けようか?」
「うん」

「ねえ、明日の目覚まし何時にかける?」
「えーーと、5時」



会話と呼ぶには、あまりにも短い
ぶっきらぼうな智久とのコトバ。

カラカラと音を立てて、私は寝室の窓を開けた。
なまぬるい風を頬に感じて、ふと智久を振り返ると

もう
彼は眠りに落ちていた。




「いつまでも 一緒にいよう」

好きって言う代わりのように、智久は私によく言う。
まだ18歳の彼の言葉は、29歳の私には届かないのに。
どうしたって届かないのに。

「次の休みには海行こう、ぜったい!」
「ピアスも携帯もおそろにしよ!」
「いいよ、汐さん。その映画一緒に観よっか」

叶えられないたくさんの約束。
無邪気で、無防備な。 智久の約束。

それでも私には、どれもが愛しい約束だった。

長いまつ毛に、すうすうと立てる寝息。
寝返りを打つ背中。
静寂な横顔も、
穏やかに結んだ口元も。

どこまでも どこまでも 愛おしかった。


翌朝、眠そうな目を擦る。
玄関で、ブーツのかかとを引っぱる。
寝癖の髪を、左手でくしゃくしゃにする。

「いってらっしゃい」
「うん」

部屋の窓から、智久の後ろ姿だけが小さくなる。

坂の下に見える、あのつたの絡まった大きな木まで
私はいつものように窓から見送った。

心だけがざわついて、
濁りのない朝の空気が痛みに変わる。

色も音も匂いも。
尖りに変わって、私を突き刺す。

やっぱり 今日も言えなかった。

もう、ここには来ないよって。
今日が最後だよって。


乾燥機から取り出した智久のTシャツを握りしめたまま
私は涙が止まらなくなった。




「麻生さん。お電話です」
「はい」

「汐里、来週には来れるんだろうな」
「うん。そのつもり」
「こっちの教授には、着いたらすぐ挨拶に来るんだぞ」
「はいはい。
 引き継ぎが思ったより、掛かってるのよ」

「式場も、俺の親が勝手に決めてるからな。
 早く来ないと、新婚旅行まで段取りされちゃうぞ」
「ふふふ。それもいいかも。
 雅治さんのお母さん、センスいいし」

「じゃあ、飛行機の時間決まったら連絡して。空港に迎えに行くから」
「わかりました。じゃあね」



大学院の先輩の雅治。



私は来月、彼と結婚する。







今日は早く帰れそうだと、智久からメールが来た。

雨あがりの匂いを感じながら、
私はあの木の下で智久を待つ事にした。

もう、あなただけを見つめていないと
あたりまえに伝えれば 智久は小さく頷くのだろうか。



三日月を指差して歩いた、あてのない散歩。
少しだけ距離を置く、別々のショッピング。
波打ち際で抱きしめてくれた、頼りない両腕。

智久に恋した日から
どうして
募る苦しみだけが繰り返していた?

始終不安に怯える私を包む優しさに
どうして
脆さや危うさだけが透過して見えていた?




毛先だけを揃えるために入った
美容院のシャンプーの匂いが鼻を突く。

両肩を抱きしめるように寄せる。
心の震えを懸命にこらえた。




「あれ? ここで待ってたの?」
琥珀色のサングラスをあげて、智久は大きな瞳を私に向けた。

「智久。話し、してもいい?」
「ん?」

「来週、私長崎に行くの」
「は?旅行?  ああ、大学の仕事?」

「私ね、結婚しようと思ってる」
「 … 」

「え?何言ってんの?冗談?」
「ほんと」

「訳わかんねーし」
「 … 」
 
「汐さん、下向いて喋るなよ」

瞬きをする暇もない程、涙がぽたぽたと溢れて行く。
顔なんて向けられるはずも無く、
珍しく声を荒げた智久の視線だけを感じていた。

「じゃあ」少しの沈黙の後、声を絞った。

「智久は私と結婚してくれるの?」

「ちょっと待って。どうしてそんな話しになるんだよ」

ふっと。
思いがけず、いつものように
両手でぎゅっと抱きしめられた。

「汐さん。何か、辛かった?」
「 … 」

「突然過ぎて、俺、わかんねーから」
「 … 」



智久のジーンズのポケットから、携帯電話を抜いて
素早く自分のメモリーを削除した。

「ちょっ、何やってんの?」智久の両手が解かれる。

「水曜日の11時発ANAの長崎行き。それで、もう帰って来ないよ。
 …止めに来て。
 智久が、智久が私と結婚してくれるなら」

「は?」

「結婚してくれるなら、止めに来て」


風が吹く度に、つたの葉がサラサラと鳴る。
駅のホームの灯りが、遠くで揺れる。

複雑に交差したつたは
このまま風に流されて、
その葉を解放するかのように音を鳴らした。




子どもみたいに、智久がしゃがみこんで言った。

「髪、切った?」

誰も気付かないくらいの、それを
あなたが見つけてくれるんだ。

私は 

初めて声を出して泣いた。




さようなら、智久。





水曜日、空港に迎えに来た雅治を
私は探した。

長崎の空は、手を伸ばせば届きそうな大きな入道雲が
深い「青」とくっきり境界線を見せていて

もう、東京の空とは違うものだった。

車から見える木々の緑も
あの駅前の、哀しく絡まるつたの葉より深く濃い。








1年が経ち、本屋で平積みされたティーン向け雑誌を手に取った。

眩しい顔で、海を睨みつける智久のグラビアを
やはりまともに見れなくて
書いてある記事には目を通さずに
積み上げられた山の上に雑誌を戻した。



質問:山下くんの「夏のあやまち」の思い出は?
山下:どうしても、空港に行けなかった事。



妄想ステキ劇場 | comments(14) | 花乃(かの)
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コメント
花乃さん♪

LOVE SONGの人がまた読める!
すごく嬉しいです☆

深夜に失礼しました…おやすみなさい(^^)
| ましろ | 2008/10/06 1:21 AM |
花乃さんと同じ日がHappy Birthday♪だったことが、嬉しくて仕方ない…
nonです♪お久しぶりです。覚えていらっしゃるでしょうか…☆

花乃さんの妄想劇場…
朝の電車のなかでにやにやしながら何度も読んじゃいました!素敵すぎます花乃さ〜ん!
私、もう完全に心は汐さんです。笑
智久くんの台詞が全部脳内再生されちゃって…ああ悲恋最高♪笑
第2話があるのですね?ふふ…楽しみです(^^)
| non | 2008/10/06 8:24 AM |
きゃん!!

ブラボー〜♪

妄想劇場、バンザ〜〜〜〜イ!^^
ただ、ただ、嬉しいわん^^

きっと 
また 
涙腺が 壊れるけど・・・笑

遅くなりましたが
姫ちゃん&ピエくん
お誕生日 おめでとう^^
彼らの未来に幸多かれ〜^^
| めいこ | 2008/10/06 8:27 AM |
おはよ〜、花乃ちゃん!!

たった、この始まりのところですでにうるうるだから!
やっぱり花乃ちゃんの物語は好き。

姫ちゃんとピエピエくん,
お誕生日おめでとう!
子供たちどんどん大きくなって嬉しいのかさびしいのか・・・。
私はもう年をとりたくないに〜週末私も誕生日だったの。
もしかして姫ちゃんピエピエくん同じ日かしら。
私の誕生日はちっとも嬉しくないわ!!
さらにPちゃんとひとつ年が離れたし!

どうでもいいことだけど、私の会員証は赤です。
何色あるのかな??
| 樹里 | 2008/10/06 9:30 AM |
ひっそりと、お邪魔していましたが、今日は、あまりの嬉しさに出てきてしまいました!
ずーっと以前に1回コメントさせていただきました、さわです。
ハピバの露出もMステで終わりか、とさみしく思っていたら、『LOVE SONGのひと』が再び!! 涙でそうになっちゃいました。これで、また、生きていかれそうです(笑) 
お忙しいと思いますが、楽しみにしていますね!

| さわ | 2008/10/06 10:03 AM |
お久しぶりです♪
涙が止まりません
もぉ〜涙腺が弱くてだめですね〜
この文面、進化してますね!!
思わず前のを引っ張り出して
確認してしまいました!!
細かい心理描写やセリフがバージョンアップですね♪
次も楽しみにしていま〜す!
| aburaniku | 2008/10/06 10:20 AM |
  今日誕生日の皆さんに
  ♪Happy Birthday♪ ^^
花乃さん、勝手にプレゼント頂いた気分でいます^^
ありがとう!ございます!
 
今年最高のプレゼントです!

智久…(初めての智久呼び。…ドキドキ…^^;)の
リアルなあやまちを聞いて見たくなりました…

改めて
姫ちゃんピエピエくん
♪Happy Birthday♪ おめでとう!
花乃さんはお子さん達に
人として素晴らしいものを与えてると思う
自分はまだまだなんて思ってくれる母はそういない
素敵なおかあさんだ!よ!^^
 ではでは☆☆☆☆☆
| ktty | 2008/10/06 11:19 AM |
花乃さん、コメは初めましてです。love songのひと・・ また読めてすごくうれしいです。以前、たまたまたどりついて読んだ時・・・繊細な言葉と巧みな描写にとても感動して、アップされるのがすごく楽しみでした。本にして欲しいと思ったほど、心に染込んで来たんです。本当に情景が浮かぶようなことばたち・・とっても素敵です。ゆっくり読んで、また浸りたいと思います♪ありがとうございます。
| みお | 2008/10/06 4:15 PM |
 花乃さんお久しぶりです。
我が家のパソコンの中に以前に花乃さんが書かれた『love songのひと』が残っています。
素敵な作品だったので何故か気になって残しておいたのです。
でも私の編集の仕方が悪くて行間がありません。
 そうこの感じ、同じ言葉なのに花乃さんの文章には情景があるんです。
そこには18歳の智久が見えます。
そして想像の世界の汐さん(花乃さん)が見えます。
 悲恋の好きな彼の書く詩のように悲しい恋のお話だけどまた巡り会えてとても興奮しています。続き楽しみにしています。

| ピィママ | 2008/10/06 6:17 PM |
花乃さん、コメントは大変大変ご無沙汰ですが……
このお話読めるなんて!!BGMに「TIME」を流しながら読んでいて、最近また「TIME」を聞いてて懐かしく思っていたんです。また読めるなんて嬉しくって出てきちゃいました。
ありがとうございます♪
| まめやっこ | 2008/10/06 6:51 PM |
以前一度だけ書き込ませていただいた者ですが,
花乃さんのLOVE SONG以前アップされた時,
ずっと齧りついて読みふけっておりました。
本当の智久君のプライベートなど知る由もない私は,
あたかもこの物語が本当の出来事のような錯覚を覚えながら
浸っておりました。(なんだか自分で書いていて怖いです,笑)
コメントの返信に削除する旨に気づいた時に
保存しておけばよかったのに,明日やろうは馬鹿やろう!!
翌日には消えていた時の喪失感はとても大きかったです
(勝手にすみません,汗っ)

ご自身が納得できないものを公開することが許せない,
モノを作る者にとっては当たり前のことなのかもしれないと思い,
残念な気持ちを抱えたまま,時折この後のストーリーに思いを
巡らせたりもしました。

このまま続きもアップしてくださるのですよね?(焦)
以前の原文(?)のままアップされるのか,
手を加えられてアップされるのか,
ドキドキしますがどちらでもいい!!
と,興奮しすぎて少しおかしな文章になってきましたので
これにて失礼たします。

最後に,またこの物語に巡り合わせてくださってありがとうございます。
| 美湖桃 | 2008/10/06 8:00 PM |
花乃さん、こんばちわ♪

朝の通勤中に読んだのですが、
とってもウルウル(T_T)したゃって、
きっと周りの人達は、私のことを怪しい人だと思ったでしよう(笑)!
何度読み返してみても、やっぱり花乃さんの文章は最高に大好きです♪
情景がリアルに目に浮かびますもの。
お時間ある時に是非続きをお願いいたします(^-^)/
| カオルン | 2008/10/06 8:35 PM |
花乃さん、こんばんは^^

つたの絡まった、ぞくっとする位大きな木の写真
PCの“写真ファイル”の中から取り出して…
ジーッと眺めているよ、麻生さんになった気分で。

バージョン・アップした「LOVE SONGのひと」
続きを楽しみにしていますよ〜♪

遅ればせながら…
姫ちゃん&ピエピエくんのお誕生日おめでとう♪
ドームコンの申し込み、間に合ってよかったね^^
| ケイ | 2008/10/06 11:53 PM |
コメントありがとうございます♪

「LOVE SONGのひと」再びアップすることにしました。
ううう…全く懲りない私です (・・。)ゞ
ちょっとだけ加筆修正しておりますので、間違い探しみたいになっちゃってますが。大汗
もし、初めてご覧になる方がいたら、きっとビックリですよね。
山下智久と福山雅治の豪華共演…ここに実現です。笑

ではでは お暇な時にでも
また覗いてください!ありがとうございました。


| 花乃 | 2008/10/08 11:11 PM |
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