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Posted by 花乃(かの)
          
         
        
        
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LOVE SONGのひと 2話
どうして
あのとき 私は

何も気付かなかったのだろう。



駅のアナウンスが終点を告げる。
眠っていたような、いなかったような。

速やかに立ち去ろうとする人の波。
ガッタンという重音とはうらはらに
ゆっくりと電車のドアが開いた。

「麻生先生、着きましたよ」

私の隣に座っていた男子学生が
重そうな鞄を肩に掛けながら言った。

「ありがとう」

線路の下に潜る、暗く小さな歩道トンネルは
夏でもひんやりと湿っぽい。
雨の名残が、いつまでも乾かない水溜まりとなって
歪んだ路の輪郭を露にする。

「おはようございます」
「おはよう」
「麻生先生、おはようございます」
「おはよう」

校門を過ぎると、長い並木道が続く。
みどりの色がうっそうと影を落とし
きらきらと溢れる陽が一層眩しい。

掲示板の前。
学生たちに紛れて、白衣姿の雅治が立っていた。
私を見つけると、小さく笑った。

「福山先生、どうしたんですか。1限始まっちゃいますよ」
「これはこれは麻生先生。   
 お車のキーを お願い できますかな?」

雅治はふざけたように言って、私にキーを渡した。

「今夜は夕飯いらないってことね」
「ああ、多分。
 さっき、教授に言われてね。
 汐里、悪いけど、車頼むよ」

「はい、了解。飲み過ぎないでね」

雅治は今の大学に移ってから
長崎にいた頃とは考えられないほど忙しくなっていた。

始発電車より早く研究室に入る為
大抵は車で大学に出勤する。
少しずつ条件を変える実験のデータ取りは
もう数ヶ月も雅治から休みを奪っていた。

式をあげて2年。
長崎の生活はわずかなものだった。

雅治はすぐに都内の大学に呼ばれ
私は暫く家にいたが
今年の春から同じ大学で働いている。



並木道を最後まで歩くと
銀色の時計台が見える。
学生たちは、よくここで待ち合わせをする。

時計台のうしろには
学生生協の入り口。
いつも誰かが行き交い、
いつも誰かの話し声が聞こえる場所。

目を閉じると、まぶしい光が残像となって揺らめく。
瞳の奥深くに、窮屈な痛みを感じた。




大学からマンションまで、車で40分。
海沿いの国道を走る。

南から少し強い風が吹いていて
カーラヂオの音が少しぶれて聴こえた。

「お願い。信号が変わりませんように」

行き先案内の看板が もうすぐ見える。

「このまま、ブレーキを踏まずに どうかこのまま」

私の嫌な胸騒ぎは的中した。

交差点の少し手前で
信号が赤になる。

その向こうの信号も
そのまた向こうの信号も
一斉に信号が変わった。

グレイに近い白地の看板の
見慣れた地名が、胸を締め付ける。


「青」 のまま
車が走り抜ければ

何も考えずに
走り抜ければ

余計な事は考えずに済んだのに。





…それは、4月の火曜日だった。
何年前になるだろう。

教授の外部講演の手伝いの帰り
私はバス停の列の長さに溜め息をついた。

少しだけ時間を潰して、何本かバスを見送ることにする。
木陰を探して歩き始めると、すぐに運動公園を見つけた。

講演会で渡された分厚い資料。
先週夜遅くまで、私と同僚でまとめたものだ。
茶封筒に入った定量解析のデータは、
ベンチの端にどさりと音を立てた。

ぽつんと佇む平日のサッカーゴールはひどく寂しい。
時折吹く強い風が、粗い芝草を揺らす。

鞄の奥から取り出した手帳の、今日の日付を探す。
ページを捲ろうとした瞬間、
後ろに人が居るのに気がついた。

ベンチに仰向けに寝転んでいた人影は、智久だった。
淡く色を抜いた長めの髪。
顔に比べて随分大きなヘッドフォンが
アンバランスに耳もとを塞いでいる。

彼は肩肘をついて起き上がり、腕時計を確認した。

…どこかで会ったことがある?
私、この子知ってる?

智久はベンチの背に身体を預けた。
私の存在など気にならない様子で静かに目を伏せる。

ヘッドフォンから流れ込む音に
少しだけ口を尖らせて、首で軽くリズムを刻む。
一度だけ前髪を、気怠そうにかきあげた。

「穏やかさ」と「鋭敏さ」が
不思議に混ざり合った、智久が放つ空気の前で。

発しようとする言葉の全てが白々く思え、
ただただ私はそこに居た。


やがて、ぼんやりと見つめる私に気付くと
智久は真っ直ぐな目で見返した。






…信号待ちの間、
看板の地名をまじまじと眺めていた。

この信号を左折。
それができれば
私はあの場所へ行ける。

智久と過ごした
あの部屋のある場所へ。

息をするのも苦しい位
ハンドルを持つ手が緊張してしまう。

この交差点に差し掛かると
いつもこうだ。

大きく深呼吸をしなければ、
この震えは止まらない。




私は この道を曲がってはいけない。

絶対に
曲がってはいけない。



私はまだ
何も気付いていないのだから。




妄想ステキ劇場 | comments(6) | 花乃(かの)
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コメント
花乃さん、おはようございます
1のときはチェリッシュを聞きたくて、今は指輪をリピしながら読みました☆☆
次はいよいよLOVE SONG・・・・

妄想の世界を超えています!
きゅんきゅんです。
どうしてこんなにも切ない気持ちを表現してくれるんでしょう!
細やかなかつ現実味のある年上の人の揺れ動く気持ち
少年の頃の智久くんと筋肉質になった智久くんとの違いも
直接描かれてなくっても手に取るようにわかって
う〜〜〜〜じゅるじゅるです
じゅるじゅる
| とき | 2008/10/09 8:13 AM |
先ほどのに訂正です
まだ大人の智久くんは登場してないけど勝手に妄想してました。すいません
| とき | 2008/10/09 8:43 AM |
最終話19のあとがきに
もう一度書き直してるって書いてあったけど
自分で完全だーーーーと思ったのができたんですね♪
次、どうだっけ?と気になって
前のを読み返したら
3話後半から4話で大号泣しすぎて、現実の自分に戻れないでいます
まるで、映画「クロサギ」のメイキングの中の
つくばの雨のシーンを撮り終えて
なかなか素に戻れない
あのぴぃちゃんと同じ状況です・・・
バージョンアップしてる4話を読んだら
どうなっちゃうかな〜
きっと何を見ても、どんな音楽を聞いても
心の震えが止まらないかもしれない
最近、ちょっとテンション下がり気味だったけど・・・
ありがとうございます!!

花乃さん、プロだな〜
| aburaniku | 2008/10/09 11:44 AM |

花乃さん、初めまして。
     LOVE SONGのひと・・前作は知らず、読んでません(泣)
     今回、初めて知って何気なく読んでいたら・・もう・・・
     きゅんきゅんです!!!
     あーん、はやく続きが見たい!!!
     という訳で、早めのアップを期待してます。
     ではまた、おじゃまします。短くてごめんなさい。

                                   ファン 明日美より
| asumi | 2008/10/09 8:36 PM |
花乃さんご無沙汰してます、ピロです(嵐担の)

もうねぇ〜読んでて鳥肌もの♪
ちょいと脳内で出演者勝手に変えちゃいました^^;;
(お許しを〜(笑))

昔アップされてたものなんですね
(そちらのご友人から聞きました^^)
手直しできれば早めにしてアップしてくださーい♪ ←勝手なことを(汗)

ひっさしぶりにテンションあがっちゃいました
ありがとうございまーす。



| ピロ | 2008/10/09 9:30 PM |
コメントありがとうございます♪

>ときさん♪
いや〜〜!もうすぐに筋肉つけた智久も登場しますから〜〜〜^^ウフッ
ここまでは、あの華奢で可憐な頃の智久です。間違いないです!
もう、どんどん妄想広げちゃってくださ〜い(ハートいっぱい)

>aburanikuさん♪
そうなんです、書き直してたはずなんですが…
今また色々といじりながらアップしてますっっ汗
まったく、お恥ずかしい。。。。。
読んで頂いて、本当に嬉しいです。励みになります。

>asumi(明日美)さん♪
初めまして。恐縮です…申し訳ないです〜〜〜
先は長いです(我ながらよく書いてたと思うくらい)が、どうぞお付き合いください。
できるだけ早めにアップしますね〜〜〜^^了解ですよ〜〜
ではでは

>ピロさん♪
ピロさん、お久しぶりです〜
もう、勝手に登場人物変えてくださって!!!どうぞどうぞ!笑
楽しんで頂けたら、これ以上のことはありませんっっっ。
モモちゃんはきっとこれを読んで
「花乃ちゃん、やっちゃたな…」と思ってるに違いない。汗汗汗


| 花乃 | 2008/10/09 10:37 PM |
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